2019年11月14日
【第2話】身近なあの子は異邦虫? ~ オカダンゴムシ属 IN JAPAN ~
~ とうじょうせいぶつ ~
いわゆる先生役の『オカダンゴムシ』。
知識はブログ主のものと一緒なので間違えることもあるかも。
【セグロちゃん】
いわゆる生徒役の『セグロコシビロダンゴムシ』。
かわいい。
【オカダンゴムシ科って?】
セグロ「ねえオカさん、前回わたしたちの分類が出てきたよね」
オカ「おう出したな、おカニ様との比較の時に」
エビ綱 ワラジムシ目 ワラジムシ亜目 Ligiamorpha下目 Armadilloidea上科
オカダンゴムシ科 オカダンゴムシ属
オカダンゴムシ(Armadillidium vulgare)
エビ綱 ワラジムシ目 ワラジムシ亜目 Ligiamorpha下目 Armadilloidea上科
コシビロダンゴムシ科 カガホソコシビロダンゴムシ属
セグロコシビロダンゴムシ(Spherillo dorsalis)
オカ「これな」
セグロ「これ見て思ったんだけど、わたしとオカさんって《科》の時点で違う動物なんだね」
オカ「そうだぜ。《ダンゴムシ》っていうのは複数の《科》をまとめた総称なんだ。主に、《ワラジムシ亜目の中の丸くなる動物》をダンゴムシと呼ぶ。《オカダンゴムシ科》《コシビロダンゴムシ科》《ハマダンゴムシ科》の3科があるな」
セグロ「ハマダンゴムシは聞いたことないなあ……」
オカ「ああ、あいつらは生息環境がかなり違うし日本じゃ珍しい連中だからな。無理もないぜ」
セグロ「じゃあ森とかにはいないんだね。で、オカダンゴムシ科と他2つって何が違うの?」
オカ「何が違う、か…… これは日本においては明確な違いがあるぜ。日本に生息するオカダンゴムシ科の動物は外来種、昔ヨーロッパから日本にやってきた生き物なんだ」
セグロ「えっ!?」
オカ「結構有名な話だぜ? ただまあ…… ダンゴムシと言ったらオカダンゴムシってところがあるから『ダンゴムシは外来種なんだぜー』って誤った雑学が広まってたりはするな。日本のコシビロダンゴムシやハマダンゴムシは在来種で元々日本にいたんだ。ワラジムシと呼ばれる虫達でもほぼ同じことが起きてたりするぜ」
セグロ「ダンゴムシ自体は昔から日本にいたんだね」
オカ「その昔からいたダンゴムシを差し置いて俺達オカダンゴムシは《日本人に最も身近な甲殻類》になったってわけだ。なんせそこらじゅうにいる」
セグロ「ずうずうしいなあ」
オカ「俺達の方が少しだけコシビロ連中より乾燥に強いからな。市街地にも進出しやすいんだぜ。市街地でもコシビロはいるとこにはいるみたいだが……」
【ダンゴムシの種類と見分け方】
オカ「で、日本にはもう一種オカダンゴムシ科の動物がいるぜ。《ハナダカダンゴムシ(Armadillidium nasatum)》だ。学名を見比べればわかる通り、こいつらもオカダンゴムシ属の仲間だぜ」
セグロ「こっちも外来種なんだよね?」
オカ「そうだぜ。こいつらは生息範囲がまだ狭くて、横浜や神戸のあたりにいるらしい。生息域は広がっていってるからそのうち全国的にみられる日が来るかもしれないな」
セグロ「オカダンゴムシもハナダカダンゴムシも何も害がなきゃいいけど…… 外来種だし……」
オカ「ヒトも全然騒がないし、大した害なさそうだけどな」
セグロ「そんな当の本人達が無責任な」
オカ「だっからヒトの思想に染まり過ぎだぜ。俺達はその場その場で懸命に生きてるだけだ。ヒトが問題にするかどうかはヒトが決めりゃいい。今んところ日本の外来ワラジムシ類が問題にされたって話は聞かないぜ」
セグロ「ヒトが決める、かあ…… ねえ、もしオカさん達がヒトにとって困るような外来種だったとしたらさ、ヒトってどうやってオカさん達とわたし達を見分けるのかな?ダンゴムシ全部ジェノサイドするわけにもいかないでしょ?」
オカ「物騒で薄情なこと言うんじゃねえよ…… ダンゴムシの見分け方か…… あるぜ、いい方法が」
セグロ「なになに?」
オカ「ケツを見るんだ」
セグロ「え?」
オカ「だからケツを見るんだよ。頭と反対側の一番端っこの節、ここを見ればオカとハナダカとコシビロとハマを見分けられる。図を用意したぞ」
オカ「こんな感じだ。オカダンゴムシは扇みたいな形、それが縦に長けりゃハナダカ、端っこがまっすぐじゃなくてカクっとしてたらコシビロ、端っこのパーツがそもそも見えなきゃハマだ。」
セグロ「わあ、いろいろ違う」
オカ「このケツの部分の真ん中のパーツは《腹尾節》、左右の端っこのパーツは《尾肢》というぜ。腹尾節の後ろから尾肢がチラ見えしてる感じだな。ヒトども、ダンゴムシを捕まえたらまずケツを見るといい。もしかしたら珍しい種類かもしれないぞ。大抵オカダンゴムシだろうがな」
セグロ「コシビロダンゴムシに会いたかったら広葉樹林とかに来てね」
【ハナダカダンゴムシとオカダンゴムシ】
オカ「最後にオカダンゴムシとハナダカダンゴムシの特徴について解説するぜ! まずはハナダカダンゴムシから。こいつらのサイズは大体1.5センチ前後のことが多く、オカダンゴムシと同じくらいだな。ダンゴムシの中では結構でかい方なんだぜ」
セグロ「わたしは0.8センチくらいだから…… 大体倍くらいあるのかあ」
オカ「ハナダカダンゴムシの特徴は、顔の真ん中にあるでっぱりだな。これが鼻に見えるってんで《鼻高》って名前になったんだそうだ。あとはそうだな、体の端っこの方が潰れ気味というか、若干平べったくなってるぜ。雑な図にするとこうだ」
セグロ「なんかワラジムシっぽい」
オカ「ちなみにこいつらはこの形状のせいでしっかり丸くなることはできないんだぜ。ケツの方が平たく曲がりにくいからどうしても若干浮いちまうんだ」
セグロ「ダンゴムシなのに……」
オカ「次に俺達オカダンゴムシの解説だ! サイズについてはさっき触れたとおり。それ以外の特徴をあげると《性的二形》が見られるってものがあるぜ」
セグロ「せいてきにけい?」
オカ「オスとメスで姿が違うって意味だぜ。オカダンゴムシの場合、メスには甲羅に黄色い斑紋があるっていうのが有名だが…… 実はこの見分けは不確実なんだぜ」
セグロ「そうなの?」
オカ「オスにも黄色い斑紋が表れることがあるからな。その場合メスよりは控えめらしいがオスにもメスにも個体差ってもんがあるし…… まあ大体は斑紋で見分けられるらしいが」
セグロ「ええ……」
オカ「より確実に見分けたいなら体の色を見るんだぜ。オスは濃い黒色をしてるんだ。逆にメスは斑紋が控えめな個体でもグレーだったりするぜ。あと成体で茶色っぽかったり白っぽかったりするのもメスだな。オスはとにかく黒いんだ。」
セグロ「ねえオカさん」
オカ「なんだ?」
セグロ「オカさんって黄色い斑紋があって体の色グレーだよね?」
セグロ「メスなの?」
オカ「そうだけどそれがどうかしたか?」
セグロ「えっ」
オカ「は? なんだ『えっ』て」
セグロ「なんでもないです」
オカ「何でもないなら変な声出すなよ。で、さらに確実な見分け方がある。腹側の下の方…… つまりいわゆる局部のあたりを見るんだ」
セグロ「きょくぶ……」
オカ「こんな風にオスの方は2本の管があるんだ。これは交尾の時に使われる器官なんだぜ」
セグロ「こ、こうび…… えっとつまりその……これ…… この管ってペ」
オカ「正確には違うぜ」
セグロ「違うなら先に言って! 言いかけちゃったじゃない!」
オカ「ヒトで言うとそうだな…… 人工授精用の注入器具か? アレから出たもんをメスの体内に注入するためのもんだな」
セグロ「アレそのものとほぼ同じじゃない! アレと!」
オカ「陸に上がった際にアレの補助をする器官が必要になって、肢が変化してこうなったらしい。《第1腹肢内肢》というぜ」
セグロ「もうアレの話は良いよ!」
オカ「安心しろ、もう今回の解説自体もう終わりだからな。てことでセグロ、今回のまとめ!」
セグロ「アレの話はもういいです!」
オカ「生物の話する以上避けちゃ通れねえと思うんだがなあ……」
~~完~~